『コードギアス』への道 キャラクターデザイン・木村貴宏編
『コードギアス』への道、3人目の登場となるのはキャラクターデザインの木村貴宏さん。アニメーターになるまで、なってからのお話を作品を軸にうかがいます。毎週火曜、金曜日更新で、全6回の予定です。
プロフィール
木村 貴宏
64年生まれ、福岡県生まれ。主な作品に『勇者王ガオガイガー』、『ベターマン』、『BRIGADOON まりんとメラン』、『GUN×SWORD』など。
第1回 アニメーターへの道
――やっぱり子供の頃から絵が好きだったんですよね?
木村 ええ、そうですね。自分の親父が、写真が趣味で、自分がちっちゃい時に描いた絵の写真をすごく残してくれていたんですよ。一番古いので2歳半ぐらいの頃に描いたものが残ってました。描いていたのは、ひかり号とか蒸気機関車とか。もうちょっと大きくなると、TVの影響で怪獣ものですね。『ウルトラマン』とか『ガメラ』とか。それが幼稚園とか小学校の頃で。やっぱり『仮面ライダー』も含め大好きでしたから。
――じゃあ、絵を描く仕事につきたいと思うようになったのも早かった?
木村 ところが、それは結構遅かったんですよ。仕事として絵を意識したのは、大学に入ってサークル活動を始めてからです。小学校のときは図工クラブだったんですけれど、中学、高校は生徒が少ない学校で、そのテの部活がなかったんですよ。だから当時は、普通にマンガを読んで、あとはマンガが好きな連中と落書きをする程度で。
――マンガはどのあたりが好きだったんですか。
木村 ええと、子供のころでいうと、石森章太郎(石ノ森章太郎)(※1)と永井豪(※2)ですね。姉がマンガ好きで少年漫画系を結構持っていたんです。石森さんでいえば『サイボーグ009』、永井豪でいえば『デビルマン』。これを小さい頃から何回も読んでいました。もうちょっと成長してからだと、やっぱり「週刊少年チャンピオン」ですね。やっぱり「がきデカ」「マカロニほうれん荘」あたりを熱心に読んでいました。
それでも、影響というとやはり永井作品は大きいかもしれないです。自分の原点って『ドロロンえん魔くん』の雪子姫(※3)なんです。その後リアルタイムで読んだ『イヤハヤ南友』も好きだったし、『キューティーハニー』はもちろん(笑)。
その後、高橋留美子さんの『うる星やつら』(※4)がドカンと入ってきて、そういう絵を真似ているうちに、女の子を描くのが楽しい! って思い始めて。そのあたりが今の自分の始まりかもしれないですね。
――アニメはどうでしたか?
木村 それなりに意識して見たのはやっぱり『宇宙戦艦ヤマト』(※5)ですね。『ヤマト』が最終回の時、親戚の家に泊まりにいったんですけれど、従兄弟は裏番組の『アルプスの少女ハイジ』(※6)を見ると聞かなくて。チャンネル争いでケンカした覚えがあります(笑)。
その後はそれなりに見ていたんですけれど、高橋良輔監督の『サイボーグ009』(※7)でまたアニメに深くはまりまして。芦田豊雄(※8)さんのキャラクターデザインが、ポイントをちゃんと押さえていてとてもよかったんですよ。それにちょっと遅れてアニメで『うる星やつら』もスタートして。それでアニメ雑誌を買うようになりました。業界を目指さないまでも、そういうものの存在をちょっと知るようになったという。
――マンガ家になろうとは思わなかったんですよね。
木村 そうです。要するにお話が作りたいわけではなかったんですよ。ほんとにキャラが描きたいという気持だけだったんで。
――そして在阪の作画スタジオ、アニメアールに入ります。
木村 大学に入るころに『装甲騎兵ボトムズ』(※9)が放送されまして、あの迫力ある作画が大好きになったんです。特に、後に「谷口キリコ」と呼ばれる、独特の画風の回が好きで。その後、『蒼き流星SPTレイズナー』(※10)が始まって、その放送中に、アニメの仕事に就きたいって思ったんです。それで、どうも『レイズナー』を作っているスタジオが大阪にあるらしい、と。専門学校なども考えては観たんですが、とにかく早く仕事として絵を柄が来てみたくて、じゃあ一度、ダメもとで、絵を描き貯めて持ち込んでみようと思ったんです。
※1 石森章太郎(石ノ森章太郎)
マンガ家。主な作品に『サイボーグ009』、『佐武と市捕物控』、『』
※2 永井豪
マンガ家。主な作品に『あばしり一家』、『デビルマン』、『バイオレンスジャック』など。
※3 雪子姫
地獄界の名門・雪女家の姫君。裾がミニになった着物がトレードマーク。氷風呂が好き。
※4 高橋留美子さんの『うる星やつら』
マンガ家・高橋留美子の代表作。諸星あたるとその押しかけ女房、宇宙人のラムを中心としたドタバタコメディ。ラムの普段着はトラジマビキニ。
※5 『宇宙戦艦ヤマト』
74年。ガミラス星の攻撃による放射能汚染により、人類の滅亡まであと1年となった。ヤマトは、放射能除去装置を手に入れるため、イスカンダル星へ往復29万6000光年という、前人未踏の航海に出発する。
※6 『アルプスの少女ハイジ』
74年、高畑勲監督。同名小説を、リアリズム的手法で丁寧にアニメ化。視聴率30%という人気番組だった。
※7 高橋良輔監督の『サイボーグ009』
79年。日本サンライズ制作。「宇宙樹編」、「戦士の休暇編」、「ネオ・ブラック・ゴースト編」からなる全50話。
※8 芦田豊雄
アニメーター・監督。スタジオライブ社長。主な作品に『魔法のプリンセスミンキーモモ』、『銀河漂流バイファム』、『魔神英雄伝ワタル』(以上、キャラクターデザイン)、『北斗の拳』(監督)など。
※9 『装甲騎兵ボトムズ』
83年、高橋良輔監督。無敵の兵士キリコとミリタリーテイストの強い小型ロボット「アーマード・トルーパー」を登場させた、リアルロボットものの代表的作品。
※10 『蒼き流星SPTレイズナー』
85年、高橋良輔監督。グラドス星と地球の戦争を背景に、両星のハーフ、エイジと地球人の仲間たちの運命を描く。
(第2回に続く)
プロフィール
木村 貴宏
64年生まれ、福岡県生まれ。主な作品に『勇者王ガオガイガー』、『ベターマン』、『BRIGADOON まりんとメラン』、『GUN×SWORD』など。
第1回 アニメーターへの道
――やっぱり子供の頃から絵が好きだったんですよね?
木村 ええ、そうですね。自分の親父が、写真が趣味で、自分がちっちゃい時に描いた絵の写真をすごく残してくれていたんですよ。一番古いので2歳半ぐらいの頃に描いたものが残ってました。描いていたのは、ひかり号とか蒸気機関車とか。もうちょっと大きくなると、TVの影響で怪獣ものですね。『ウルトラマン』とか『ガメラ』とか。それが幼稚園とか小学校の頃で。やっぱり『仮面ライダー』も含め大好きでしたから。
――じゃあ、絵を描く仕事につきたいと思うようになったのも早かった?
木村 ところが、それは結構遅かったんですよ。仕事として絵を意識したのは、大学に入ってサークル活動を始めてからです。小学校のときは図工クラブだったんですけれど、中学、高校は生徒が少ない学校で、そのテの部活がなかったんですよ。だから当時は、普通にマンガを読んで、あとはマンガが好きな連中と落書きをする程度で。
――マンガはどのあたりが好きだったんですか。
木村 ええと、子供のころでいうと、石森章太郎(石ノ森章太郎)(※1)と永井豪(※2)ですね。姉がマンガ好きで少年漫画系を結構持っていたんです。石森さんでいえば『サイボーグ009』、永井豪でいえば『デビルマン』。これを小さい頃から何回も読んでいました。もうちょっと成長してからだと、やっぱり「週刊少年チャンピオン」ですね。やっぱり「がきデカ」「マカロニほうれん荘」あたりを熱心に読んでいました。
それでも、影響というとやはり永井作品は大きいかもしれないです。自分の原点って『ドロロンえん魔くん』の雪子姫(※3)なんです。その後リアルタイムで読んだ『イヤハヤ南友』も好きだったし、『キューティーハニー』はもちろん(笑)。
その後、高橋留美子さんの『うる星やつら』(※4)がドカンと入ってきて、そういう絵を真似ているうちに、女の子を描くのが楽しい! って思い始めて。そのあたりが今の自分の始まりかもしれないですね。
――アニメはどうでしたか?
木村 それなりに意識して見たのはやっぱり『宇宙戦艦ヤマト』(※5)ですね。『ヤマト』が最終回の時、親戚の家に泊まりにいったんですけれど、従兄弟は裏番組の『アルプスの少女ハイジ』(※6)を見ると聞かなくて。チャンネル争いでケンカした覚えがあります(笑)。
その後はそれなりに見ていたんですけれど、高橋良輔監督の『サイボーグ009』(※7)でまたアニメに深くはまりまして。芦田豊雄(※8)さんのキャラクターデザインが、ポイントをちゃんと押さえていてとてもよかったんですよ。それにちょっと遅れてアニメで『うる星やつら』もスタートして。それでアニメ雑誌を買うようになりました。業界を目指さないまでも、そういうものの存在をちょっと知るようになったという。
――マンガ家になろうとは思わなかったんですよね。
木村 そうです。要するにお話が作りたいわけではなかったんですよ。ほんとにキャラが描きたいという気持だけだったんで。
――そして在阪の作画スタジオ、アニメアールに入ります。
木村 大学に入るころに『装甲騎兵ボトムズ』(※9)が放送されまして、あの迫力ある作画が大好きになったんです。特に、後に「谷口キリコ」と呼ばれる、独特の画風の回が好きで。その後、『蒼き流星SPTレイズナー』(※10)が始まって、その放送中に、アニメの仕事に就きたいって思ったんです。それで、どうも『レイズナー』を作っているスタジオが大阪にあるらしい、と。専門学校なども考えては観たんですが、とにかく早く仕事として絵を柄が来てみたくて、じゃあ一度、ダメもとで、絵を描き貯めて持ち込んでみようと思ったんです。
※1 石森章太郎(石ノ森章太郎)
マンガ家。主な作品に『サイボーグ009』、『佐武と市捕物控』、『』
※2 永井豪
マンガ家。主な作品に『あばしり一家』、『デビルマン』、『バイオレンスジャック』など。
※3 雪子姫
地獄界の名門・雪女家の姫君。裾がミニになった着物がトレードマーク。氷風呂が好き。
※4 高橋留美子さんの『うる星やつら』
マンガ家・高橋留美子の代表作。諸星あたるとその押しかけ女房、宇宙人のラムを中心としたドタバタコメディ。ラムの普段着はトラジマビキニ。
※5 『宇宙戦艦ヤマト』
74年。ガミラス星の攻撃による放射能汚染により、人類の滅亡まであと1年となった。ヤマトは、放射能除去装置を手に入れるため、イスカンダル星へ往復29万6000光年という、前人未踏の航海に出発する。
※6 『アルプスの少女ハイジ』
74年、高畑勲監督。同名小説を、リアリズム的手法で丁寧にアニメ化。視聴率30%という人気番組だった。
※7 高橋良輔監督の『サイボーグ009』
79年。日本サンライズ制作。「宇宙樹編」、「戦士の休暇編」、「ネオ・ブラック・ゴースト編」からなる全50話。
※8 芦田豊雄
アニメーター・監督。スタジオライブ社長。主な作品に『魔法のプリンセスミンキーモモ』、『銀河漂流バイファム』、『魔神英雄伝ワタル』(以上、キャラクターデザイン)、『北斗の拳』(監督)など。
※9 『装甲騎兵ボトムズ』
83年、高橋良輔監督。無敵の兵士キリコとミリタリーテイストの強い小型ロボット「アーマード・トルーパー」を登場させた、リアルロボットものの代表的作品。
※10 『蒼き流星SPTレイズナー』
85年、高橋良輔監督。グラドス星と地球の戦争を背景に、両星のハーフ、エイジと地球人の仲間たちの運命を描く。
(第2回に続く)