『コードギアス』への道 キャラクター・デザイン木村貴宏編 第3回
第3回 『ダーティペアFLASH』で初キャラクターデザイン
――初キャラクターデザインはビデオシリーズの『ダーティペアFLASH』(※1)ですね。
木村 そうです。ただ正確には、ゲームの『ヴァリアブル・ジオ』のほうが先にキャラクターデザインの作業をしていたんです。その直後に『ダーティペアFLASH』のキャラクターのオーディションがあって、結果的に世に出たのは『ダーティペアFLASH』が先になりました。
『ダーティペアFLASH』はオーディションの話がアール全体にも来て、有名無名関係なく、やりたいんだったら、参加してほしいということでした。オーダーもそれほど細かくなく、「ユリ・ケイに見える新しいキャラを一回描いてみてほしい」という内容で。それで参加することにしましたが、緊張はしましたね。
自分自身、安彦(良和)さん(※2)、土器手(司)さん(※3)のユリとケイをずっと見ていたわけですから、まず、そこにハードルがある。
それに「全く新しいユリ・ケイにしたい」というのはわかるんですが、じゃあ、自分が描いたものを、新しいユリ・ケイとしてファンの人がそれをストレートに受け容れてくれるのかどうかを考えると……。そこにもハードルはある。
――するとデザインをまとめるまで時間がかかったんですか。
木村 うーん、デザインを作ることそのものは、結果的にそんなに苦しまずにできたんですよ。おかげさまでそれが採用になって。むしろ、しんどかったのは、デザイナーとして、ちゃんとした設定画をあげることでした。当然ですが、それまでアニメーターとして設定を見ながら仕事してきたわけですが、いざ、自分が描こうと思うとこうも難しいものなのかと。アニメーターが作業しやすいよう、ちゃんと情報が盛り込まれた設定というのが、なかなか描けない。上京して2週間ぐらいサンライズに閉じこもって作業をしたんですけれど、あまりのしんどさに精神的にもボロボロで、500円ハゲができちゃいました(苦笑)。
――デザインを見ると、ケイの前髪が立っているあたりに、木村さんらしさを感じるんですが。
木村 今見ると『ガオガイガー』の護くんの髪型にも通じるデザインですね。第1回でも話をしましたが、石森章太郎や永井豪のマンガが好きで、そのテイストをどっかに活かしたいなって思ってた結果が、たぶん、この特徴のある髪型だったんじゃないでしょうか。
――実作業はどうでしたか。
木村 総作画監督的な立場で、いちおう全話に目を通しました。なにしろ毎月リリースの作品だったので、スケジュール的にはTVシリーズと大差なく、そういう意味では大変でしたね。それでもファンの皆さんに支えられて、その後『2』と『3』も作られる長いシリーズになりました。トータルで16話あるんですよ。それで『3』の時に、ようやく1本、自分で直接作画監督出来ることになったんです。「Vol.3 夏色の勝利者」というビーチバレーのエピソードですね。ユリとケイが出ずっぱりで、水着も10着ぐらい着替えるんで、これは、かなり気合いを入れて作業をしました。
――では『ダーティペアFLASH』に続く転機は、どの作品になるでしょうか。
木村 やはり『ガオガイガー』ですね。『ガオガイガー』もオーディションで決まりました。キャラクターの数は多かったですが、アニメーションのデザインの仕事も『ダーティペアFLASH』しかやっていないわけで、まだまだ、ああしたい、こうしたい、あんなのも描いてみたいなあっていうのが結構あったんで、とても自然に、ある意味欲望のままにできました。特に、オヤジキャラとかの男性キャラや、子供は、まだあまり描いてきていませんでしたから。
※1 『ダーティペアFLASH』
94年、須永司、望月智充監督。主人公たちの名前こそユリ・ケイと同名だが、前シリーズの主人公たちとは別人。WWWAの新米トラコンでありラブリーエンジェルのコードネームを受け継ぐ二人の活躍を描く。
※2 安彦良和
アニメーター、監督、漫画家。主な作品に『機動戦士ガンダム』(アニメーションディレクター)、『クラッシャージョウ』(監督)、マンガ『虹色のトロツキー』など。小説『ダーティペア』のイラストを担当。
※3 土器手司
アニメーター。主な作品に『うる星やつら』、『ダーティペア』など。
(第4回に続く)
――初キャラクターデザインはビデオシリーズの『ダーティペアFLASH』(※1)ですね。
木村 そうです。ただ正確には、ゲームの『ヴァリアブル・ジオ』のほうが先にキャラクターデザインの作業をしていたんです。その直後に『ダーティペアFLASH』のキャラクターのオーディションがあって、結果的に世に出たのは『ダーティペアFLASH』が先になりました。
『ダーティペアFLASH』はオーディションの話がアール全体にも来て、有名無名関係なく、やりたいんだったら、参加してほしいということでした。オーダーもそれほど細かくなく、「ユリ・ケイに見える新しいキャラを一回描いてみてほしい」という内容で。それで参加することにしましたが、緊張はしましたね。
自分自身、安彦(良和)さん(※2)、土器手(司)さん(※3)のユリとケイをずっと見ていたわけですから、まず、そこにハードルがある。
それに「全く新しいユリ・ケイにしたい」というのはわかるんですが、じゃあ、自分が描いたものを、新しいユリ・ケイとしてファンの人がそれをストレートに受け容れてくれるのかどうかを考えると……。そこにもハードルはある。
――するとデザインをまとめるまで時間がかかったんですか。
木村 うーん、デザインを作ることそのものは、結果的にそんなに苦しまずにできたんですよ。おかげさまでそれが採用になって。むしろ、しんどかったのは、デザイナーとして、ちゃんとした設定画をあげることでした。当然ですが、それまでアニメーターとして設定を見ながら仕事してきたわけですが、いざ、自分が描こうと思うとこうも難しいものなのかと。アニメーターが作業しやすいよう、ちゃんと情報が盛り込まれた設定というのが、なかなか描けない。上京して2週間ぐらいサンライズに閉じこもって作業をしたんですけれど、あまりのしんどさに精神的にもボロボロで、500円ハゲができちゃいました(苦笑)。
――デザインを見ると、ケイの前髪が立っているあたりに、木村さんらしさを感じるんですが。
木村 今見ると『ガオガイガー』の護くんの髪型にも通じるデザインですね。第1回でも話をしましたが、石森章太郎や永井豪のマンガが好きで、そのテイストをどっかに活かしたいなって思ってた結果が、たぶん、この特徴のある髪型だったんじゃないでしょうか。
――実作業はどうでしたか。
木村 総作画監督的な立場で、いちおう全話に目を通しました。なにしろ毎月リリースの作品だったので、スケジュール的にはTVシリーズと大差なく、そういう意味では大変でしたね。それでもファンの皆さんに支えられて、その後『2』と『3』も作られる長いシリーズになりました。トータルで16話あるんですよ。それで『3』の時に、ようやく1本、自分で直接作画監督出来ることになったんです。「Vol.3 夏色の勝利者」というビーチバレーのエピソードですね。ユリとケイが出ずっぱりで、水着も10着ぐらい着替えるんで、これは、かなり気合いを入れて作業をしました。
――では『ダーティペアFLASH』に続く転機は、どの作品になるでしょうか。
木村 やはり『ガオガイガー』ですね。『ガオガイガー』もオーディションで決まりました。キャラクターの数は多かったですが、アニメーションのデザインの仕事も『ダーティペアFLASH』しかやっていないわけで、まだまだ、ああしたい、こうしたい、あんなのも描いてみたいなあっていうのが結構あったんで、とても自然に、ある意味欲望のままにできました。特に、オヤジキャラとかの男性キャラや、子供は、まだあまり描いてきていませんでしたから。
※1 『ダーティペアFLASH』
94年、須永司、望月智充監督。主人公たちの名前こそユリ・ケイと同名だが、前シリーズの主人公たちとは別人。WWWAの新米トラコンでありラブリーエンジェルのコードネームを受け継ぐ二人の活躍を描く。
※2 安彦良和
アニメーター、監督、漫画家。主な作品に『機動戦士ガンダム』(アニメーションディレクター)、『クラッシャージョウ』(監督)、マンガ『虹色のトロツキー』など。小説『ダーティペア』のイラストを担当。
※3 土器手司
アニメーター。主な作品に『うる星やつら』、『ダーティペア』など。
(第4回に続く)